OVERVIEW
月揚庵は「さつま揚げ」の食物販店。レイヤー状に重なったデザインは、手前が一番低く、徐々に高さを増していくようにすることで奥行き感を演出している。このお店の一番の特徴は、その場で調理し、揚げたてを提供するスタイル。そのため、揚げ場に立つ調理人が絵になるよう、厨房内の設えにも注力した。厨房という機能面からタイルが適していたため、意匠性も考慮し、張り合わせると和柄のようにもモミジの葉のようにも見えるタイルを選択した。
3色のタイルを貼り分けているのだが、調理人の立ち位置も想定しながら、まずはグラフィックにて張り上がったイメージを創り、そのイメージを職人さんと共有しながら現場でざっくりシート貼りした後、さらに一枚剥がしては別の色をはめ込むという作業を繰り返し完成させた。現場での見え方や職人さんとの協業による「不測の美」が、躍動感のある調理人の所作を引き立てる背景として上手く成立したと感じている。
言い加えるとすれば、このような個性的すぎないがアイデンティティのあるタイルは使い勝手が良く、今回は壁面仕上げやショーケースのコルトンボックスに対し、このタイルから想起されたオリジナルのグラフィックを展開し、アイデンティティを増幅させるまでに至った。
(井上愛之/ドイルコレクション)
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